日米間の贈与の税金問題をズバリ解説!

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相談者:Aさん
米国に住む娘夫婦が不動産の購入を予定しているため頭金相当額を援助しようと考えています。日本と米国でどのような課税を受けるのか教えてください。

私と妻は日本国籍で日本に住んでおり、娘は日本国籍でグリーンカード保有、娘の夫は米国籍です。

1.日本と米国の贈与税
(1)日本の贈与税
日本の贈与税の納税義務者は、贈与を受けた人(受贈者)です。非課税贈与枠は年間110万円までで、この金額は受贈者が米国居住者(日本非居住者)であっても同様です。

親や祖父母が負担する、子や孫の生活費、教育費、医療費、養育費も贈与税の対象となりません。これらは親や祖父母の扶養義務の常識的な範囲内でのみ認められますので、不動産や投資資金などまとまった金額のものを贈られた場合は、贈与税の課税対象となることに注意してください。

1人年間110万円を超えた金額の贈与については、超過分について10%~55%の累進税率による贈与税が課されることになります。

なお、米国居住者が日本の贈与税の課税を受ける場合は、納税管理人を選任して日本で申告納税をする必要があります。

>>納税管理人についてはこちらをご覧ください。

(2)米国の贈与税
米国の贈与税の納税義務者は、贈与をした人(贈与者)で、日本とは逆になっています。

日本の居住者である親から、米国の居住者である子への贈与において、米国の贈与税の対象となるのは、日本の親の米国内の有形財産を贈与したときです。

有形財産と無形財産の分類は次のとおりです。

①有形財産
現金、不動産、自動車、美術品など
②無形財産
有価証券(株式、債券、ファンドなど)、電子送金、著作権など

米国内の有形財産の贈与として課税を受ける場合、受贈者1人について14,000ドル(2015年)の非課税枠を利用することができます。なお、受贈者が配偶者で、米国籍有りの場合は非課税、米国籍無しの場合は143,000ドル(2015年)の非課税枠が利用できます。

非課税枠を超えた贈与を行った場合、贈与者は18%~40%の累進税率による贈与税が課されることになります。

2.ご相談のケース
(1)日本から資金を送金する場合
①日本での課税
Aさんが日本居住者ですのでAさんの娘は日本の贈与税の課税を受けることになります。これは、米国籍の娘の夫に贈与した場合も同様です。

贈与税対策としては、(贈与ではなく)金銭の貸し借りにする、相続時精算課税制度を使う、不動産の名義をAさんにする などの方法があります。

>>日本の贈与税対策の詳細はこちらをご覧ください。

②米国での課税
Aさんが米国の贈与税の課税を受けるのは、米国内の有形財産を贈与した場合のみです。したがって、Aさん名義の銀行口座からAさんの娘名義(または娘夫婦のジョイント・アカウント)への送金は、米国の贈与税の対象とはなりません

なお、米国の贈与税の対象とはなりませんが、年間100,000ドルを超える米国非居住者外国人(Aさん)からの贈与については、米国の受贈者(Aさんの娘)はForm3520を翌年4月15日までにIRSに提出する義務がありますのでご注意ください。

(2)米国内にある財産を贈与する場合(不動産・株式)
①日本での課税
Aさんが日本居住者ですので、海外財産の贈与であっても、Aさんの娘は日本の贈与税の課税を受けることになります。

親と子の両方が日本国籍の場合に、海外財産の贈与について日本の贈与税を非課税とするためには、親と子の両方が贈与時点から遡って5年超、日本国外に居住している必要があります。

>>海外居住者の贈与税対策はこちらをご覧ください。

②米国での課税
日本の親が米国の贈与税の課税を受けるのは、米国内の有形財産を贈与した場合のみですので、不動産(有形財産)は課税、株式(無形財産)は非課税となります。

したがって、米国内の不動産など有形財産を贈与の対象とされる場合は、無形財産へ転換した後の贈与を検討することをお勧めいたします。

なお、日本居住者(Aさん)から非居住者(Aさんの娘)への有価証券の贈与は、日本で国外転出時課税(出国税)の対象となりますのでご注意ください。

>>非居住者への有価証券の贈与に対する出国税課税はこちらをご覧ください。

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当コラムは2015年7月現在の税制に基づいて作成しており、読者の皆様のご理解を深めるために内容を簡素化している場合がございます。また、具体的な状況によって課税関係が変わる可能性がありますので、記載情報に基づいて行動される前に、弊所までご相談して頂ければと思います。

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