非居住者の生命保険解約に伴う税金問題をズバリ解説!

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相談者:Aさん 海外移住により日本非居住者のステータスです。日本居住者のときに、日本の生命保険会社の保険商品に加入しましたが、解約を検討しています。

加入している保険商品は次の2つです。

①一時払い終身保険 ・保険期間の初日から8年経過 ・払込金額2,000万円、解約返戻金2,200万円(利益200万円)

②一時払い養老保険 ・保険期間の初日から4年経過 ・払込金額3,000万円、解約返戻金3,500万円(利益500万円)

日本での課税がどのようになるか、節税余地はあるのか教えてください。なお、日本に事業拠点はありません

1. 日本での課税

日本の生命保険会社で加入した保険商品から得た利益は、日本国内で発生した所得として日本で課税を受けるのが原則です。課税の受け方は、保険期間や解約のタイミングによって、源泉徴収(源泉分離課税)、または、確定申告(総合課税)となります。 なお、源泉徴収税率は15.315%、総合課税の税率は5%~45%の累進税率(別途復興特別所得税2.1%)です。

■源泉徴収(源泉分離課税)の場合…所得税法第161条第11号

保険料が一時払いの生命保険など(損害保険や共済を含む)のうち、 保険期間が5年以内のもの、または、保険期間が5年超でも保険期間の初日から5年以内に解約したもの から生じた利益

■確定申告(総合課税)の場合…所得税法第161条第1号

上記以外の保険から生じた利益

したがって、Aさんの日本での課税は次のとおりとなります。

①一時払い終身保険 ・保険期間が5年超(終身)で、保険期間の初日から5年超(8年)経過しているため、確定申告が必要です。 ・税額:約2万円…{(利益200万円-特別控除額50万円)×1/2-基礎控除38万円}×5.105%

②一時払い養老保険 ・保険期間が5年超(終身)ですが、保険期間の初日から5年以内(4年)なので、源泉徴収されることになります。 ・税額:約76万円…利益500万円×15.315%

2. 租税条約による課税の免除

日本が外国と締結している租税条約の内容によっては、日本国内で発生した保険解約益について、居住国でのみ課税を受け、日本での課税が免除される場合があります。 主要な国における取扱いは次のとおりです。

■日本での課税が免除される国 米国、香港、インドネシア、ベトナム

■日本での課税が免除されない国 カナダ、オーストラリア、シンガポール、タイ、マレーシア、中国

例えば、Aさんが香港在住の場合は、日本国内で発生した保険解約益について、日本での課税が免除されます。免除を受けるための手続きは次のとおりです。

①一時払い終身保険 ・手続(確定申告)をすることなく、自動的に免税となります。

②一時払い養老保険 ・解約返戻金の支払いが行われる日までに、支払者の日本の生命保険会社を通じて「租税条約に関する届出書」を税務署に提出する必要があります。この手続きにより約76万円の源泉徴収が免除されることになります。

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当コラムは2015年9月現在の税制に基づいて作成しており、読者の皆様のご理解を深めるために内容を簡素化している場合がございます。また、具体的な状況によって課税関係が変わる可能性がありますので、記載情報に基づいて行動される前に、弊所までご相談して頂ければと思います。

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