複雑でわかりにくい海外金融投資への課税と外国税額控除についてわかりやすくご説明します。
複雑でわかりにくい海外金融投資への課税と外国税額控除についてわかりやすくご説明します。
外国と日本で同じ所得に重複して課税された場合に、この二重課税を調整するため外国税額控除制度が設けられています。
例えば、外国株式の配当に対して、外国で課税された場合、確定申告を行うことで、日本の所得税額から外国での所得税相当額を控除することができます。
具体的には、次の算式で求めた控除限度額の範囲内で控除することができます。
所得税の控除限度額=その年分の所得税の額×その年分の国外所得総額/その年分の所得総額
所得税から控除しきれない場合は、復興特別所得税、道府県民税、市町村民税の順に各控除限度額まで控除することができます。また、その年に控除し切れなかった外国税額控除は、翌年以降3年間の繰越利用が認められています。
なお、投資国にて、日本との租税条約で規定された限度税率を超える税率で外国所得税が課された場合でも、外国税額控除として認められるのは限度税率で決定された外国所得税のみとなります。この場合、投資国の税務当局に請求を行うことで、過大に課された外国所得税の還付を受けることができます。
代表的な例として、日本居住者が米国株式の売却益を得た場合、日米租税条約の適用を受ける届出書(Form W-8BEN)を提出していれば、売却益に対する課税は免除されます。しかし、Form W-8BENを提出していないときは、米国株式の譲渡益に対して30%の源泉徴収をされることがあります。
この場合、日本の確定申告では、日米租税条約で決定された米国所得税が免税であるため、外国税額控除の適用を受けることができません。
米国での源泉徴収税額は、Form 1040NRを提出することで、還付を受けることができます。
■日本居住者が米国株式(上場)の譲渡益100に対して米国で源泉徴収された場合
・米国金融機関での源泉徴収は30のため、日本居住者の受取額は70
・日本居住者は米国株式の譲渡益100に対して申告分離課税で確定申告、外国税額控除は適用できない
・米国にて限度税率を超えて源泉徴収された30(=30-0)は、米国の税務当局に還付請求することで還付可能
また、外国での配当・利子について、※の国では、租税条約の限度税率によらず全ての非居住者(日本居住者含む)に対して一律の税率で源泉徴収が行わます。そのため、外国税額控除の対象は、実際の源泉徴収税額ではなく、租税条約の限度税率で計算した金額であることにご注意ください。
なお、限度税率を超過して源泉徴収された金額は、各国税務当局に対して還付請求することで還付を受けることができます。
■主要国の配当・利子に対する税率
国名 | 配当 | 利子 | ||
非居住者の 源泉徴収税率 |
日本との租税条約による 限度税率 |
非居住者の 源泉徴収税率 |
日本との租税条約による 限度税率 |
|
アメリカ | 30% | 10% | 30% | 10% |
カナダ | 15% | 15% | 0% | 10% |
オーストラリア | 10% | 10% | 10% | 10% |
スイス | ※35% | 10% | ※35% | 10% |
イギリス | 0% | 10% | ※20% | 10% |
フランス | ※30% | 10% | 0% | 10% |
ドイツ | ※26.375% | 15% | 0% | 10% |
イタリア | 15% | 15% | ※12.5% | 10% |
■日本居住者がスイス法人(上場)から配当100を受ける場合
・スイス金融機関での源泉徴収税率は(租税条約の限度税率10%に関わらず)35%のため、日本居住者の受取額
は65
・日本居住者は配当100を申告分離課税として申告、外国税額控除は限度税率により計算した10のみ
・スイスにて限度税率を超えて源泉徴収された25(=35-10)は、スイスの税務当局に還付請求することで還付
可能
海外、特に※の国からの投資収益がある方は、租税条約の限度税率を超えて徴収された外国所得税の還付を受けることができる可能性がありますので、過去の取引明細書(Statement)などを一度ご確認してみてはいかがでしょうか。
源泉徴収税額の還付手続については、個別にお問い合わせください。
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