納税管理人を頼まれた場合の注意点は?

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平成27年度税制改正により出国税が導入されることになりました。出国税の納税の猶予を受けるための要件の1つとして、納税管理人を選任することが求められており、今後、納税管理人を頼まれる機会が増えることが予想されます。そこで今回は納税管理人の役割を整理したうえで、頼まれた場合の注意点を解説いたします。

納税管理人に関しては、関連サイト(納税管理人.com)でも解説しておりますので、ぜひこちらも参考にしてください。

目次

1. 納税管理人とは

納税管理人とは、日本の非居住者が、日本で申告が必要な所得が生じたり(例:国内不動産の賃料)、日本の相続税や贈与税を納付しなければならない場合に、その方のために納税事務処理を行う人のことをいいます。納税管理人は日本に住所があれば、個人だけでなく法人もなることができます。また、有償でも無償でも構いません。通常は親族や顧問税理士にお願いされる方が多いです。

納税管理人の具体的な業務は、次の2つです。

(1)非居住者の確定申告書を提出し、税金を納付すること(還付の場合は還付金を受け取ること)
(2)税務署から送付される書類を受け取ること

納税管理人を置く場合の手続きは、次のとおりです。

(1)所得税
税務署に「所得税・消費税の納税管理人の届出書」を提出します。提出期限は、出国日までです。

なお、届出書を提出する税務署は、納税管理人の納税地ではなく非居住者の納税地です。具体的には次の順で考えます。

① 非居住者となる方の住所にその方の親族がそのまま居住している場合 → 非居住者となる方の住所地(今までと同じ税務署です)
② ①に該当しない場合で、国内不動産の賃貸を行う場合 → 不動産の所在地(複数ある場合は一番規模が大きいもので判断します)
③ ①&②に該当しない場合は、出国直前の納税地 → 非居住者となる方の住所地(今までと同じ税務署です)

(2)住民税
住民税は1月1日に日本国内に住所がある人に対して、前年の所得に基づいて課される税金で、翌年6月頃に納税通知書が郵送されます。納税管理人を置いた場合は、日本居住者の場合と同様に一括納付または年4回に分けて分割納付をすることができます。納税管理人を置かない場合、例えば、平成27年3月に出国して日本非居住者となるときは、出国までに平成26年の未納分と平成27年分を全て納付する必要がありますのでご注意ください。

手続きは、1月1日の住所地の市区町村に「納税管理人申告書」を提出します。

(3)固定資産税
日本に自宅や賃貸不動産を所有したまま出国して非居住者となる場合は、固定資産税の納税管理人を選任する必要があります。

手続きは、不動産の所在地の市区町村(東京23区の場合は都税事務所)に「納税管理人申告書」を提出します。

2. 納税管理人を頼まれた場合の注意点

相談者: Aさん(納税管理人)、Bさん(非居住者)

Q. Bさんから納税管理人を頼まれて税務署などへの手続きが完了しました。Bさんは平成27年2月に出国しましたが、Bさんの平成26年分の確定申告書の提出期限はいつまでですか?

日本居住者と同様に平成27年3月16日(月)が確定申告書の提出期限です。Bさんが平成26年12月31日時点で海外に5,000万円超の財産を保有されている場合は国外財産調書も提出する必要がありますのでご注意ください。

Q. Bさん所有の賃貸不動産の管理会社から送られてくる年間報告書をもとにBさんの確定申告書を代行して作成するよう頼まれています。報酬は受け取らない予定です。何か問題はありますか?

税務書類の作成代行は税理士法に抵触して問題となる可能性があります。
税理士法では、税務書類の作成代行や税務代理は(無償であっても)税理士の独占業務と規定されています。ここで、納税管理人による税務書類の作成代行が、税理士法に違反しているかは不明確です。したがって、Bさんの税務書類をAさんが代行して作成するのは無報酬であっても避けて、Aさんに作成を依頼するのが安全な対応と考えます。

Q. 仮にBさんが平成26年分の税金を支払わない場合、私の財産が差押えなどの滞納処分を受けることになるのですか?

なりません。平成26年分の税金の納税義務はBさんにあります。Aさんの財産が差押えられることも、連帯して納付する義務もありません。

Q.税務署からBさんの過去分の所得税の調査の連絡があった場合、調査に応じる義務はあるのですか?

原則として調査に応じる義務があります。
納税義務があるのはBさんですが、申告書の提出や申告書に関連した税務署からの問い合わせへの対応は、納税管理人のAさんに責任があるためです。なお、税法上の調査はあくまで任意調査ですが、質問検査を拒否した場合には罰則を適用することも予定されていますので、Aさんは至急Bさんと連絡を取り調査に対応することをおすすめいたします。

なお、AさんがBさんに代わって税務調査への対応をすることは、税理士法に抵触して問題となる可能性がありますので、Aさんが主体的に対応するか、難しい場合は税理士に依頼されるのが安全な対応と考えます。

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当コラムは2015年1月現在の税制に基づいて作成しており、読者の皆様のご理解を深めるために内容を簡素化している場合がございます。また、具体的な状況によって課税関係が変わる可能性がありますので、記載情報に基づいて行動される前に、弊所までご相談して頂ければと思います。

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