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2018年秋から日本と外国との間で金融機関の口座情報の交換が始まると聞きました。内容を教えてください。

情報交換の正式名称は、CRS(Common Reporting Standard:共通報告基準)といいます。CRSは、金融機関に非居住者の口座がある場合、その金融機関が税務当局を通じて、非居住者が住む国の税務当局に、その口座情報を共通の基準で報告する仕組みです。日本は2018年9月に初回の情報交換を予定しています。以降毎年9月に情報交換を行う予定です。

CRSによる情報交換の具体的な影響を教えてください。

例えば、日本居住者が海外の銀行に定期預金1億円を持っているとします。この場合、海外の銀行が現地の税務当局に、個人情報(氏名、住所等)、収入情報(利子の年間受取総額)、残高情報(口座残高)を報告し、これらの情報が現地の税務当局から国税庁に提供されることになります。

国税庁はこれらの入手した情報と申告書を照らして、所得や相続財産の申告漏れがある場合は、税務調査等を行うことを予定しています。

なお、日本は2018年9月に初回の情報交換を行う予定ですので、税務調査等が本格化するのは、税務署での情報精査が完了する2019年以降かと思います。

2018年9月の初回の情報交換、2019年9月の2回目の情報交換で国税庁に提供されるのは、どのような口座が対象ですか?

<2018年9月の初回の情報交換>
日本居住者が海外の金融機関に保有する口座のうち、原則として、次の①②についての2017年分の収入情報と残高情報
・2016年12月末の口座残高が100万㌦超の個人口座
・2017年1月1日以降に新規開設した個人・法人口座

<2019年9月の2回目の情報交換>
日本居住者が海外の金融機関に保有する口座のうち、原則として、次の①②についての2018年分の収入情報と残高情報
・2016年12月末の口座残高が100万㌦以下の個人口座(※)
・法人口座(※)

(※)海外の金融機関が居住地国の特定を完了している場合には初回の2018年9月から情報交換が行われることになります。

海外金融機関の口座残高が少額の場合でも、情報交換の対象になるのですか?

次の口座は情報交換の対象外です。
①個人の休眠口座(2017年1月1日以前3年以内に払い出しなどの取引がなく、口座残高が1,000㌦以下などの要件を満たす口座)
②2016年12月末時点の口座残高が25万㌦以下の法人口座

②に該当する法人口座は、2017年以後の毎年末において口座残高が25万㌦以下であれば以降の情報交換の対象外です。

なお、2017年1月1日以降に新規開設する口座は、個人・法人ともに金額基準がなく、全ての口座が情報交換の対象となります。

CRSによる情報交換の対象国を教えてください。

日本に先行して、2017年9月からフランス、ドイツ、英国など欧州諸国や、英領ケイマン諸島、英領マン島、英領バージン諸島(BVI)など一部のタックス・ヘイヴン(租税回避地)は情報交換を開始します。

2018年9月からは日本やスイス、香港、シンガポール、中国、マレーシア、オーストラリアなどが初回の情報交換を予定しています。

BVIなどのタックス・ヘイヴンや香港、シンガポール、スイスは、情報の匿名性を確保する国策によって投資を呼び込んできましたが、こうした国・地域もCRSへの参加を表明しています。

なお、米国はすでに独自に同様の制度(FATCA:Foreign Account Tax Compliance Act)を整えているため、CRSには参加していません。

CRSによる情報交換の参加署名国は、次のリンクを参照してください。

SIGNATORIES OF THE MULTILATERAL COMPETENT AUTHORITY AGREEMENT ON AUTOMATIC EXCHANGE OF FINANCIAL ACCOUNT INFORMATION AND INTENDED FIRST INFORMATION EXCHANGE DATE(Status as of 30 August 2017)
https://www.oecd.org/ctp/exchange-of-tax-information/MCAA-Signatories.pdf

国税庁に提供される情報の内容を教えてください。

毎年9月末に前年分の次の情報が、海外の税務当局から国税庁に提供されます。

▽個人情報 氏名、住所、生年月日、居住地国、納税者番号(マイナンバー)、口座番号
▽収入情報 利子、配当、株・社債の譲渡代金などの年間受取総額
▽残高情報 預貯金残高、有価証券残高などの口座残高

日本では、預貯金へのマイナンバーの付番が2018年1月から任意で始まる予定ですが、これに先んじて海外の金融機関では納税者番号(TIN:Tax Identification Number) としてマイナンバーの確認がされることになります。

今年(2017年)に入って、海外の金融機関からマイナンバーの提出を求めるレター等が届いているようです。提出しない場合は口座の強制的な閉鎖などの措置が取られることもあるようですので、対応については慎重にご検討ください。

金融機関が、口座保有者が非居住者かどうかを確認する流れを教えてください。

CRSの取り組みは、2017年1月1日から始まっており、同日以後の口座開設は口座開設者が金融機関に提出する届出書で居住地国が特定されます。

また、同日以前(2016年12月31日以前)に開設した既存口座は、金融機関が口座保有者の居住地国を特定します。この場合、口座保有者が個人か法人か、個人の場合は契約金額が1億円超か1億円以下によって、居住地国を特定する手法が異なっています。

なお、法人の場合、資産運用のためのペーパー・カンパニーなどは、その実質的支配者について居住地国を特定されることになります。

既存口座について、金融機関が居住地国を特定する期限は、情報交換の予定日に対応して次のとおりです。

◎個人口座 ・2016年12月31日の口座残高が1億円以下の場合 2018年12月31日
・2016年12月31日の口座残高が1億円超の場合  2017年12月31日
◎法人口座 ・2018年12月31日

金融機関が法人の実質的支配者の居住地国を特定する流れを教えてください。

Step1:法人口座の2016年12月末以降の毎年末残高が25万㌦以下かどうか
・毎年末残高が25万㌦以下の場合、CRSの情報交換の対象外ですので、実質的支配者の居住地国の特定プロセスには進みません。

Step2:法人が特定法人に該当するかどうか
・上場会社やそのグループ会社、公共法人等は特定法人に該当しません。
・投資関連所得/総収入金額の割合、または、投資関連所得の基となる資産/総資産の割合のどちらかが50%以上の法人(Passive Entity)は、特定法人に該当し、実質的支配者の居住地国の特定が行われて、居住地国の税務当局に法人口座の情報が提供されます。

Step3:法人口座の残高が1億円超かどうか
・口座残高が1億円超の場合、金融機関から口座保有者に対して実質的支配者の居住地国を届け出るよう連絡があります。届け出をしない場合、金融機関が保有する情報にて居住地国を特定されます。
・口座残高が1億円以下の場合、金融機関が保有する情報にて居住地国を特定されます。

法人の実質的支配者はどのような人が該当しますか?

原則として、法人の議決権の25%超を保有する自然人をいいます、ただし、明らかに名義株主の場合や、他の自然人が議決権の50%超を保有している場合は該当しません。

具体的には、Passive EntityのControlling PersonであるBeneficiary Ownerが実質的支配者に該当します。なお、Beneficiary Ownerが特定できない場合や、株主全員の議決権が25%以下の場合は、法人取締役が実質的支配者に該当し、居住地国が特定されることになると考えられます。

法人の実質的支配者の特定に関して、具体的にどのような影響が想定されますか?

例えば、日本居住者がBVIなどオフショア地域に法人を設立し、香港やシンガポールなどで法人口座を開設して資産運用をしている場合、この法人口座情報が国税庁に提供されることになります。

なお、日本居住者がオーナーのオフショア法人の利益は、タックス・ヘイヴン税制が適用されて、個人の雑所得として申告納税する必要がありますのでご注意ください。