CRS導入を受けて海外資産の申告対応はどうすべきか?

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2018年9月末に、CRS(共通報告基準)による情報交換が実施され、海外税務当局より日本居住者の海外口座情報が国税庁に提供されました。今回、国税庁に提供された海外口座情報は、2016年12月末の口座残高が100万ドル超の個人口座、2017年1月1日以降に新規開設した個人・法人口座 のです。

現在、税務署にて情報の精査が進められており、申告漏れが明らかになった方を対象に順次税務調査が実施されるものと予想されます。なお、2016年12月末の口座残高が100万ドル以下の個人口座や、法人口座についても、海外金融機関が居住国を特定している場合は、今回の情報交換で情報提供されている可能性がありますのでご留意ください。

弊所では、CRS導入を受けて海外資産や海外所得の申告漏れにどのように対応すればよいか?など、多くのご相談を受けてきました。

当方からは、すでに税務署が申告漏れの情報を把握しており、税法の解釈で争う余地が少ないので、税務調査が入る前に自主的に申告することがよろしいのでは、とアドバイス差し上げています。自主的な申告により、加算税の減免を受けることができるだけでなく、いつ税務署が来るかという精神的なご負担もなくなるためです。

国税庁公表の国際戦略トータルプランにあるように、税務署は国外送金等調書やCRSによる海外口座情報などを活用し、積極的に税務調査を実施することを宣言しており、海外資産の申告漏れについては、いつ税務調査があってもおかしくない状況と考えております。

海外資産の申告漏れを自主的に申告する場合の注意点などを、次のとおり列挙しますのでご参考にしていただければと思います。

目次

申告方針

・自主申告は2013年(H25年)から2017年(H29年)の5年間が対象
・各年末の海外資産残高が5,000万円超の場合は、同年の国外財産調書の提出が必要
・2016年(H28年)と2017年(H29年)は、財産債務調書の提出要否を要検討

申告に際して準備する資料

・2013年(H25年)1月以降のMonthly Statement
・2013年(H25年)から2017年(H29年)の確定申告書の控え、または、源泉徴収票
・2012年(H24)12月以前に取得した金融商品がある場合は、取得日と取得価額がわかる資料

自主申告の場合のペナルティ

・修正申告の場合:過少申告加算税が免除、延滞税は本来の納期限から起算して上限1年で計算
・期限後申告の場合:無申告加算税が5%に軽減(国外財産調書提出による更なる軽減措置あり)、延滞税は本来の納期限から起算して納付日までの期間で計算

申告に際しての注意点

・海外預金利子は利払日のTTMで換算して利子所得として申告
・現地で源泉徴収されている場合は外国税額控除の適用が可能(租税条約による限度税率を要確認)

・海外市場で取引可能な株式やファンド
– 配当/分配金は(海外口座での取引であっても)、期限後申告の場合は申告分離課税で申告可能、修正申告の場合は総合課税で申告(配当控除の適用不可)
– 譲渡益は申告分離課税で申告、譲渡損は申告により国内上場株式等の譲渡益と通算可能(ただし、上場株式配当との通算および翌年以降の繰越は不可)

・海外市場で取引可能な債券
– 2013年(H25年)から2015年(H27年)の利子は利子所得として申告、譲渡益は非課税、譲渡損は切り捨て
– 2016年(H28年)および2017年(H29年)の利子・譲渡益・譲渡損は、上記の株式やファンドと同様の取扱い

・ジョイントアカウントで発生した運用益は、アカウントホルダーの資金提供割合で按分計算して申告

・BVIなどタックスヘイブン国のペーパーカンパニーで発生した金融商品運用益は、原則として個人の雑所得として申告が必要。なお、雑所得は累進課税(所得税+住民税で最大55%)。個人直接保有の場合の申告分離課税約20%と比べて不利なケースが多いため要注意。

・プライベートバンク型の運用(投資家が元本を拠出し、運用はファンドマネージャーに一任)から生じる運用益の申告は、当初の運用契約書を要確認。

・申告漏れの海外資産が相続財産の場合は、国内相続財産と合算して合計額が基礎控除額を超えるか否かで、相続税申告の要否を検討。また、海外資産から運用益が発生している場合は、被相続人の確定申告(準確定申告)や相続人の確定申告が必要となる場合あり。

海外金融商品には、日本の税制が想定していない商品形態もありますので、その場合は個別具体的に申告方針を判断する必要があります。具体的なご相談はお電話またはお問合せフォームからご連絡ください。

CRSの最新動向は、こちらのQ&Aをご覧ください。

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当コラムは2018年10月現在の税制に基づいて作成しており、読者の皆様のご理解を深めるために内容を簡素化している場合がございます。また、具体的な状況によって課税関係が変わる可能性がありますので、記載情報に基づいて行動される前に、弊所までご相談して頂ければと思います。

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