FATCA(外国口座税務コンプライアンス法)をズバリ解説!

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本日、スイス大手金融機関のクレディ・スイスが、米国人富裕層の脱税をほう助した疑いにつき米当局の捜査を受けている問題で、脱税ほう助を認めて、総額28億1,500万ドル(約2,860億円)の罰金を払うと発表しました。

目次

クレディ・スイス、脱税ほう助認める 罰金2860億円 米当局に

【ジュネーブ=原克彦】スイスの金融大手クレディ・スイスは20日、米司法省などに脱税ほう助の罪を認め、総額28億1500万ドル(約2860億円)の罰金を払うと発表した。顧客情報の守秘を巡る米当局とスイス金融界の攻防で、米国が大きな成果を挙げた格好。スイスの銀行は10行以上が脱税ほう助で米当局の捜査を受けており、今後も巨額の罰金が続く可能性がある。

クレディ・スイス、脱税ほう助認める 罰金2860億円  米当局に : 日本経済新聞

スイスの銀行といえば、「ゴルゴ13」や「ルパン三世」などで資金の預入先として登場するように、その匿名性・守秘性の高さを特徴としていることをご存じの方も多いと思います。
この特徴のため、スイスの銀行は、非合法活動や犯罪を含む不法・不正な報酬の受け取りやその蓄財・脱税に適しており、世界各国の独裁者や犯罪者が利用しているとも言われています。

では、今回、クレディ・スイスが米国人富裕層の脱税ほう助を認めるに至ったのはどのような背景があるのでしょうか?

その1つの要因となったFATCA(外国口座税務コンプライアンス法)についてQ&A形式で解説していきます。

Q.FATCA(外国口座税務コンプライアンス法)とはどのような法律ですか?

米国人が、外国金融機関を利用してマネーロンダリングや課税から回避しようとする行為を防止するために、一定額以上の外国(米国外)金融資産を保有している場合、その内容を米国歳入庁(IRS:米国の税務署)へ報告することを義務化した法律です。
正式名は、Foreign Account Tax Compliance Act といい、日本では「ファトカ」と呼ばれています。

Q.どのような場合に報告が必要となるのですか?

大きく分けて次の3つの場合に、その金融資産の内容を米国歳入庁へ報告することが必要となります。

①米国にお住まいの方(個人)
米国外に金融資産を、年間最高残高が7万5千ドル、または、年度末残高が5万ドル以上お持ちの場合は、報告する必要があります。日本国籍でも、米国の居住者となる方は報告義務があるのでご注意ください。
実務上は、FORM8938に必要事項を記載して、タックス・リターン(米国の確定申告)に添付して報告しします。

②米国外にお住まいの米国市民の方(個人)
米国外に金融資産を、年間最高残高が30万ドル、または、年度末残高が20万ドル以上お持ちの場合は、報告する必要があります。アメリカの永住権(グリーン・カード)をお持ちの方も対象となりますのでご注意ください。

③米国外の金融機関(法人)
FATCAを批准した国の金融機関は、顧客口座から米国人口座を特定して、その内容を米国歳入庁に報告する必要があります。

スイスは昨年、米国の要望を受け入れて、議会でFATCAを批准しており、これが今回の報道の背景となっています。日米間では昨年(2013年6月)、FATCAの実施に向けた共同声明が出され、2014年7月1日から運用される予定です。

なお、金融機関には、銀行だけでなく、証券会社、投資事業組合、従業員持株会なども対象となります。

>>FATCAの個人口座への影響についてはこちらをご覧ください。

Q.報告が必要な金融資産は、どのようなものが対象となりますか?

外国銀行口座だけでなく、社内預金、財形、住宅貯蓄、株式、債券なども対象となります。

Q.日本にもFATCAに類似した制度はあるのですか?

今年から導入された国外財産調書制度があります。

これは、日本にお住まいで、年末時点で海外に5,000万円(時価)を超える財産をお持ちの方が、翌年3月の確定申告期限までに財産の内訳や金額などを税務署に提出しなければならない制度です。海外の財産にかかる所得税や相続税・贈与税の申告漏れを防ぐために、この制度が導入されました。

>>国外財産調書の概要についてはこちらをご覧ください。

また、2016年1月から導入されるマイナンバーは、税務当局が納税者の国外財産情報を把握する目的での活用が検討されています。
具体的には、マイナンバーの導入後は、国外財産調書にマイナンバーが付されるほか、海外口座の情報共有制度が実施された段階においては、国外から提供される利子や配当等の情報についても、マイナンバー付きで税務当局に提供されることが予定されています。

>>マイナンバーの国外財産税務への影響についてはこちらをご覧ください。

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当コラムは2014年5月現在の税制に基づいて作成しており、読者の皆様のご理解を深めるために内容を簡素化している場合がございます。また、具体的な状況によって課税関係が変わる可能性がありますので、記載情報に基づいて行動される前に、弊所までご相談して頂ければと思います。

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