非居住者の日本不動産の税金問題をズバリ解説!

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事例:Aさん 国際結婚をして20年以上、アメリカに住んでいます。国籍は日本で、永住権(グリーンカード)を取得しています。アメリカでは夫と共同で自宅を所有しており、現在この自宅に居住しております。

昨年、父から相続した都内のマンションで一人暮らしをしていた母が亡くなりました。相続人は私一人なのでこのマンションを相続して、先日、日本の相続税の申告が完了しました。今後日本に住む予定はなく、空室にするのも勿体ないので、賃貸するか売却しようと考えています。

Q1. 賃貸する場合の日本の税金の取扱いについて教えてください。

国内不動産の賃貸収入は、国内源泉所得と呼ばれて、貸主がたとえ日本非居住者であったとしても、日本で所得を申告し納税しなければなりません。

また、日本非居住者が貸主の場合は、原則として、賃借人は支払金額の20.42%(所得税20%、復興特別所得税0.42%)を源泉徴収して納付する義務があります。例外として、不動産の賃借人が個人で、その個人又はその個人の親族が住む場合には、源泉徴収の必要はありません。

したがって、不動産の賃借人が法人の場合は、法人側で源泉徴収義務が生じます。仮に、法人側が源泉徴収をせず満額で賃料を支払い続けた場合に、後日、税務調査で源泉税の不納付が分かった場合、法人側では源泉税に加えて不納付加算税(源泉税の10%)や延滞税の支払いが必要となってしまいますので、ご留意ください。

なお、日本での源泉徴収税額は、米国の申告の際に外国税額控除を適用することで、日米国での二重課税が解消されることになります。

Q2. 源泉徴収された場合は、日本での確定申告は必要ないのですか?

源泉徴収のいかんにかからわず、日本非居住者が日本不動産から得る所得は、日本で確定申告をする必要があります。不動産の賃借人が法人の場合で、源泉徴収されたときは、確定申告により源泉徴収部分を精算することになります。

確定申告の手続きとしては、確定申告の度に帰国する必要はなく、どなたかを納税管理人に依頼して、その人が確定申告と納税をすることになります。

なお、日本で申告したとしても、米国での申告が免除される訳ではないことにご注意ください。日本と米国では、減価償却の耐用年数、為替、支払利子などの計算ルールが異なるため、同じ物件でも不動産所得が異なるという結果が生じることが一般的です。

Q3. 住民税など所得税以外の税金の取扱いについて教えてください。

住民税は、1月1日に日本に住所がない場合は、納税義務がありません。事業税も、国内に恒久的施設(PE)がない限り、納税義務がありまません。但し、固定資産税は、日本国内に不動産を保有しているときは、納税義務があります。したがって、所得税と同様に、固定資産税の納税管理人を選任して納税する必要があります。

Q4. 売却する場合の日本の税金の取扱いについて教えてください。

 国内不動産の売却による所得は、国内源泉所得となりますので、売却した人が日本非居住者であったとしても、日本で所得を申告し納税しなければなりません。

また、日本非居住者が売却する場合は、原則として、不動産の購入者が売却価額の10.21%(所得税10%、復興特別所得税0.21%)を源泉徴収して納付する義務があります。例外として、不動産の購入者が個人、対価が1億円以下、かつ、購入した個人又はその個人の親族がその不動産に住む場合には、源泉徴収の必要はありません。

不動産を売却した場合の所得は、他の所得と分離して税金計算を行います。売却した年の1月1日において所有期間が5年以下の不動産を売却した場合の税率は30.63%、所有期間が5年超の場合の税率は15.315%となります。なお、相続で取得した場合の取得日は、死亡した人の取得日がそのまま取得した人に引き継がれることになります。

日本不動産からの賃貸収入と同様に、日本非居住者の日本不動産の売却から得た所得は、源泉徴収のいかんにかかわらず、日本で確定申告をする必要があります。対価について源泉徴収された場合は、確定申告で精算することになります。

また、住民税は非居住者であるため納税義務がありません。

Q5. 居住用のマンションの売却の場合、税率の軽減などの特例があると聞いたことがあるのですが、利用することはできますか?

Aさんの場合、特例を利用することはできません。

居住用不動産の売却には、居住用という事情を考慮して、軽減税率や3,000万円特別控除などの特例が準備されています。これらの特例の適用を受けるためには、各特例の要件を満たす必要があるのですが、その前提として売却する不動産が「居住用」である必要があります。 「居住用」と認められるためには、所有者としてその不動産に住んでいた事実が求められますので、20年以上アメリカにお住まいのAさんが、特例を利用することはできません。

>>海外居住者が日本不動産を相続する場合の相続税対策は、こちらをご覧ください。

(2015年5月7日追記) 2015年3月16日から非居住者のみで日本法人を設立することができるようになりました。これにより、日本非居住者の方でも不動産保有会社の設立による節税策が可能となります。不動産所得(収入ではなく利益部分)が1,000万円を超える場合は、法人運営コストを上回る税メリットを受けられる可能性が高いので、一度、不動産保有会社の設立を検討されてみてはいかがでしょうか?

>>非居住者の日本法人設立のメリットは、こちらをご覧ください。

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当コラムは2014年10月現在の税制に基づいて作成しており、読者の皆様のご理解を深めるために内容を簡素化している場合がございます。また、具体的な状況によって課税関係が変わる可能性がありますので、記載情報に基づいて行動される前に、弊所までご相談して頂ければと思います。

コメント

  1. M より:

    [居住用不動産の売却には、居住用という事情を考慮して、軽減税率や3,000万円特別控除などの特例が準備されています。」
    3000万円の控除についてですが、海外で私自身が居住用として住んでいた不動産でも適用になりますか?
    その際に、必要になる住んでいたことの証明としての住民票が日本のようにない国は、証明できないと見なされますか?

    1. 会計士 高鳥 拓也 より:

      コメント頂き有難うございました。
      「居住用不動産を譲渡した場合の3,000万円特別控除」における居住用不動産は、国内不動産に限定されていませんので、
      国外の居住用不動産を売却した場合においても適用は可能です。

      この特定の適用を受けるための手続として、売却日から2か月を経過した後に交付を受けた除票住民票等の提出が求められています。
      住民票がない国の不動産について適用を受ける場合には、原則として在留証明書が必要になります。

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