確定申告は必要?~183日ルールの誤解~

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Q.米国人の夫と国際結婚して20年以上米国に住んでいます。私は日本国籍でアメリカの永住権(グリーンカード)を持っています。
この度、日本で一人暮らしをしている父の介護のため、年に3~4回、日本に帰国することになりました。日本での滞在期間は183日を超える見込みです。また、日本での諸手続のため父の住所で住民票を作ることにしました。

米国で不動産所得があるのですが、183日ルールが適用されて、日本の居住者として日本で確定申告が必要になるのでしょうか?

Point:
日本の居住者かどうかは、183日ルールで判断されません!

A.
1.183日ルールの誤解

国際税務において183日ルールが使われる場面は大きく言って次の3つがあるのですが、これらを混同して理解されている方が多いように思います。

①海外出張の際に、出張国で課税がされるか否か(短期滞在者免税)
②米国で確定申告する際に、居住者と非居住者のどちらのステータスで申告するか(Substantial Presence Test:実質滞在条件テスト)
③外国の居住者となるかどうか(居住者の判定)

①は租税条約、②は米国の法律、③は居住者の判定に日数基準を採用している国の法律 とそれぞれ依って立つ根拠が異なります。それぞれの183日ルールの意味合いを正しく理解しないと、思わぬ落とし穴がありますのでご注意ください。

以下、それぞれについて解説いたします。

①短期滞在者免税

海外勤務の場合、給与・賞与は日本の会社から日本の銀行口座に振り込まれたとしても、勤務している外国で課税されるのが原則です。しかし、この原則どおり運用すると、数日間の出張の場合でも出張先の国で課税されることになり、納税事務に手間がかかることなるため、租税条約で例外として、出張国での課税が免除されています。

例えば、日本人の米国出張の場合、日米租税条約に基づいて課税関係を整理することになり、
滞在日基準(183日ルール)や支払地基準などを満たした場合、米国出張中の給与・賞与については米国連邦税の課税が免除されます。

この場合の183日ルールは、「いかなる365日間」においても183日を超えて米国に滞在していないこと を意味します。「いかなる365日間」とは暦年(1月1日から12月31日)ではなく、滞在期間を含む前後365日間を指しますのでご注意ください。

なお、米国出張中の給与・賞与は、米国での課税が免除されるのみで、日本での課税が免除されるわけではありません。

②Substantial Presence Test:実質滞在条件テスト

①の183日ルールにより、米国滞在日数が183日を超えた場合、米国での課税が免除されず、米国で確定申告が必要となります。この際、米国独自で定めている183日ルールに従って、居住者と非居住者のいずれのステータスで確定申告するかを判断します。居住者と非居住者のいずれのステータスで申告するかによって申告内容や税額が変動するのが一般的です。

具体的な日数計算は以下のとおりです。

申告年度(暦年)の滞在日数+申告年度(暦年)の前年の滞在日数×1/3+申告年度(暦年)の前々年の滞在日数×1/6

③居住者の判定

外国の居住者となるかどうかはその国の法律によって決まります。例えば、カナダやオーストラリアなどでは、居住者か非居住者かの判定の際に日数基準を用いています。この日数基準として1年の半分超、つまり183日ルールを多くの国が用いているのです。

>>各国の居住者の条件はこちらをご覧ください。

誤解されている方が多いのですが、日本は居住者の判定に183日ルールを採用していません。

日本の居住者になるかどうかは、日本に「生活の拠点」があるかどうかで判断されます。
そして、「生活の拠点」は、a)期間,b)住居,c)職業,d)国籍,e)生計を一にする親族の有無,f)資産の所在 などの客観的な事実に基づいて総合的に判断されます。

日本の居住者かどうかを判断するのは日本の税務当局なので、自己申告で自由に出来ること(例えば、住民票、海外在留届、社会保険など)のみをもって、日本の非居住者であると判断するのはリスクが高いのでご注意ください。反対に、日本に住民票があることのみをもって、日本の居住者と認定される可能性は低いと言えます。

また、米国も居住者の判定に183日ルールを採用していません。米国の税法上、米国の国籍や永住権(グリーンカード)を保有している場合、どこに住んでいたとしても米国居住者として扱われて全世界の所得に対して課税されます。

したがって、米国の国籍や永住権(グリーンカード)を保有して、日本に住んでいる方は、必然的に米国と日本の両方の居住者となってしまいます。この場合は、日米租税条約で双方居住者の問題を解決することになります。

2.御質問への回答

183日ルールの適用ですが、①は給与所得者の海外出張の場面、②は米国で申告義務がある場合の申告ステータスの判定の場面、③は183日ルールを居住性の判定基準としている国での判定の場面 ですので、今回のご質問のケースではいずれも適用がありません。

日本の居住者に該当するかどうかは、税務当局によって、日本に「生活の拠点」があるかどうかを客観的な事実に基づいて総合的に判断されることになります。したがって、183日を超えて日本に滞在していること、及び、住民票があること のみをもって、日本居住者と判断される可能性は低いと考えられます。
米国に住居がありその住居に家族と同居していること、米国で不動産を所有し所得を得ていること、米国の永住権を持ち米国で確定申告をしていること などの客観的事実から日本の非居住者であることを税務当局に主張することは可能と考えます。

日本の非居住者となる場合は、米国での不動産所得は日本で申告する必要はありません。但し、日本滞在中に日本で獲得した所得は、基本的に日本で確定申告が必要となることをご留意ください。

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当コラムは2014年8月現在の税制に基づいて作成しており、読者の皆様のご理解を深めるために内容を簡素化している場合がございます。また、具体的な状況によって課税関係が変わる可能性がありますので、記載情報に基づいて行動される前に、弊所までご相談して頂ければと思います。

弊所では海外在住の方でもSkype等を用いてご相談を承っております。初回の簡易相談は無料ですので、こちらまでお気軽にお問い合わせください。

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