海外送金について、皆様からよくいただくご質問にお答えします!
ご質問.
米国に住む子供が不動産の購入を予定しているため、約3,000万円の資金援助を検討しています。資金は、私の日本の銀行口座から、子供の米国の銀行口座に送金する予定です。日本と米国で贈与税がどうなるのか、また、合法的な贈与税の対策としてどのようなことが可能なのか教えてください。
回答.
1.日本と米国の贈与税
日本に住む親から米国に住む子への贈与は、日本と米国それぞれで贈与税の対象となるか検討する必要があります。
日本では、日本居住者からの贈与は、贈与を受けた人の国籍や居住地に関わらず、贈与を受けた人に日本の贈与税が課税されます。
米国では、贈与税の納税義者は日本とは逆で、贈与を受けた人ではなく贈与した人となっています。贈与した人が米国非居住者の場合は、米国内の有形資産を移転した場合のみ米国の贈与税が課税されることになります。
したがって、日本の親名義の銀行口座から米国の子名義の銀行口座に送金される場合は、米国内の有形資産の移転には該当しないため、米国の贈与税は課税されません。これに対して、贈与した人が日本の親(日本居住者)ですので、贈与を受けた米国の子に日本の贈与税が課税されることになります。
2.贈与税の対策
取りうる対策として、次の3つがありますので、今回と次回に分けてそれぞれ解説いたします。
(1) 親子間での金銭の貸し借りにする。
(2) 相続時精算課税制度を利用する。
(3) 資金の負担割合に応じて不動産の登記を行う。
(1) 親子間での金銭の貸し借りにする方法
親子間での金銭の貸し借りであれば、米国の子に日本の贈与税が課税されることはありません。ただし、税務署から金銭の貸し借りではなく贈与と認定されて、後日、贈与税を払うことになるケースもありますので注意が必要です。
税務署に親からの金銭の借り入れとして認められるには、次の点に気を付ける必要があります。
①借用証書を作成…借り入れた事実と返済条件を明確にするためです。
②現実的な返済額を設定…全ての借入金(親以外の金融機関などからの借入金も合算)を返済した後の残金でも生活できる水準に設定します。
③現実的な返済期間を設定…親の年齢などを考慮して、常識的な範囲内で返済期間を設定します。
④適切な利息を設定…親子間の金銭の貸し借りであっても、年率2%の利息を付けるのが安全です(※)
⑤銀行振込で返済する…税務署へ返済の事実を証明するためです。
⑥借用証書どおりに返済する。…「ある時払いの催促なし」にしないことが重要です。
(※)利息を付けなくても金銭の借り入れとして認められますが、この場合は、親から子へ利息額相当の贈与があったものとして取り扱われます。この利息額が年間110万円以下であれば、贈与税の基礎控除額内ですので、基本的に贈与税は課税されないことになります。
なお、親子間での金銭の貸し借りに際して、日本から海外(又は海外から日本)へ100万円を超える送金があった場合には、日本の金融機関から税務署に国外送金調書が自動的に提出されます。その後、支払調書の提出を受けた税務署から「国外送金等に関するお尋ね」が届く可能性があります。
お尋ねにて、送金の目的、送金原資などを確認されることになりますので、借用証書含めて税務署への説明書類を事前ご用意して置かれることをお勧めいたします。
なお、海外送金に際して、税務署への届け出は不要ですが、送金額が3,000万円を超える場合には、日本銀行に報告をする必要がありますのでご留意ください。
(2)相続時精算課税制度を利用する場合の留意点はこちらをご覧ください。
>>海外居住者の贈与税対策はこちらをご覧ください。
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当コラムは2014年7月現在の税制に基づいて作成しており、読者の皆様のご理解を深めるために内容を簡素化している場合がございます。また、具体的な状況によって課税関係が変わる可能性がありますので、記載情報に基づいて行動される前に、弊所までご相談して頂ければと思います。
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