近年、税務署は個人資産への課税強化を進めており、それに伴って、今後も国外への送金や国外資産についての監視が強化されていく、と見られています。海外送金を行った後に送られてくる「お尋ね」が届いた場合、どのように対応すれば良いのでしょうか?
今回より、過去に弊社クライアント様から寄せられたご相談のうち、よくあるご質問についてQ&A形式で解説させて頂きます。
目次
ご相談内容
アメリカの不動産に投資する目的で、アメリカにある私と妻の共同名義口座(joint account)に2,000万円相当を送金しました。送金資金は私の資金で、現在口座に入っている4,000万円相当も全て私の資金です。その後、税務署から「国外送金等に関するお尋ね」が届きましたが、回答の仕方が分からず放置していました。また、実は、共同名義口座に年間100万円ほど利子所得があるのですが、日本では申告していませんでした。なお、日本では給与所得のほかに、不動産所得があるので、これまで確定申告はしております。
Q.そもそも「お尋ね」とはなんですか?
「お尋ね」というのは、税務署が申告漏れを把握するための納税者への質問状、と言えます。
この質問状は、法律上の根拠が無いので、回答することはあくまで納税者の任意(自由)となります。したがって、回答しなくても、また、期限を過ぎて回答してもペナルティはありません。
しかし、税務署では、「国外送金等の支払調書(※)」で、海外送金があった事実を把握しており、回答がない場合や、把握している事実と回答内容に食い違いがある場合は、税務調査に発展する可能性があります。
(※)「国外送金等の支払調書」とは、100万円を超える海外送金(日本から海外、海外から日本への送金)があった場合に、金融機関などから税務署に提出される調書です。
Q.では、「お尋ね」と申告漏れとなっている利子所得はどのように対応すればいいですか?
税務署に連絡したり、ご自身で「お尋ね」に回答する前に税理士に相談してください。そして、税理士と相談のうえ、「お尋ね」への回答とあわせて、自主的に修正申告することをお勧めいたします。
申告漏れのペナルティとして、過少申告加算税があります。
このペナルティは、自主的に修正申告して納税した場合は免除され、税務調査が入った後に納税した場合には、原則として、追加納税額の10~15%が課されるというものです。
ここで注意して頂きたいのですが、税務署は「お尋ね」を税務調査とみなしてペナルティを課そうとしてくることがあります。しかし、「お尋ね」は税務調査には当たりませんので、本当はペナルティを支払う必要が全くありません!
弊所のクライアント様でも「お尋ね」に対して、何もわからないまま税務署に連絡してしまい、必要以上の税金を支払った後にご相談頂くケースが多くなっております。しかし、一旦支払った税金を取り戻すのは非常に難しいと言わざるを得ません。
したがって、「お尋ね」が届いたからと言って、慌てて税務署に連絡される前に、信頼できる国際税務の専門家にご相談し、修正申告などの対応を検討されるのがよろしいかと思います。
>>弊所では、国際税務に精通した税理士が「お尋ね」対応を支援させて頂いております。詳しくお知りになりたい方は、こちらをご覧ください。
Q.共同名義口座への送金は、妻への贈与となって贈与税がかかることはありませんか?
共同名義口座に送金しただけでは、直ちに「贈与」の認定を受けることはありません。
しかし、この口座の資金(すべて旦那様の資金)を元手に海外不動産を購入し、この不動産を旦那様と奥様の共同名義にしてしまうと、奥様への贈与と認定されてしまうので注意が必要です。
また、共同名義口座の資金はすべて旦那様の資金ですので、国外財産調書の提出要件(5,000万円超の海外財産を保有)に該当する点にご留意ください。なお、提出の要否は、年末時点の状況で判断することになります。
>>今年(2014年3月17日提出期限分)の国外財産調書を提出されていない場合の対応は、こちらをご覧ください。
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当コラムは2014年5月現在の税制に基づいて作成しており、読者の皆様のご理解を深めるために内容を簡素化している場合がございます。また、具体的な状況によって課税関係が変わる可能性がありますので、記載情報に基づいて行動される前に、弊所までご相談して頂ければと思います。
ほとんどすべて読ましていただき大変参考になりました。アメリカに不動産を持ち中古アパート経営をしています。69歳です。将来の贈与スキームにおいてご相談したいと考えています。