確定申告の時期が近づき、弊所にも海外所得に関連するご相談が多く寄せられております。そのなかでも「海外口座にある株式の申告方法がわからない」というご相談が特に多いので、まとめて解説してみたいと思います。
(1)海外口座の株式配当
よくある誤解は、海外で源泉徴収税(Withholding Tax)が取られているので日本で申告する必要はないと思っていた というものです。確かに、日本の証券会社の特定口座(源泉徴収有)の場合は申告する必要はないのですが、海外口座の場合は源泉徴収されているからとって、日本での申告が免除されているわけではありません。この点は利子も同様の考え方ですのであわせてご注意ください。
なお、給与所得者で年末調整で課税が完了している方は、2014年の海外口座の株式配当の合計額が20万円以下であれば、確定申告する必要はありません。
確定申告の方法は、次のとおりです。
上場株式からの配当の場合
・申告分離課税:税率20.315%(所得税等15.315%、地方税5%)
・国内口座の上場株式の譲渡損失との損益通算が可能
・配当控除は認められない
・外国税額控除の利用により、日本の税金から海外での源泉徴収税を控除することができる未上場株式からの配当の場合
・配当所得として総合課税:累進税率
・配当控除は認められない
・外国税額控除の利用により、日本の税金から海外での源泉徴収税を控除することができる
注意点としては、海外口座での株式配当が無いものと思っている方でも、配当を株式の取得に再投資(Re-Investment)するプログラムになっている可能性があります。この場合は、確定申告が必要ですので、念のため海外金融機関から発行されるStatementを確認することをお勧めいたします。
(2)海外口座の株式譲渡益
2014年の海外口座の株式譲渡益の合計額が20万円を超えている場合は、日本で確定申告する必要があります。
確定申告の方法は、次のとおりです。
・株式の上場・未上場に関係なく申告分離課税:税率20.315%(所得税等15.315%・住民税5%)
・上場株式配当との損益通算や譲渡損失の3年間の繰越控除は認められない
・2013年12月31日までの軽減税率10.147%(所得税等7.147%・住民税3%)の適用もなし
注意点としては、株式売却益の算定の際に取得価額の情報が必要となるのですが、海外金融機関によっては2014年のStatementに(売却代金の記載はあるものの)取得価額の情報が記載がないことがあります。その場合は、海外金融機関に過去分のStatementの再発行を依頼する必要がありますが、再発行には2週間程度の時間がかかることが多いようです。余裕を持って確定申告できるよう、2014年中に海外口座で株式売却益が出た方は、早めに2014年のStatementを確認することをお勧めいたします。
>>株式以外の海外での投資所得の確定申告については、こちらをご覧ください。
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当コラムは2015年1月現在の税制に基づいて作成しており、読者の皆様のご理解を深めるために内容を簡素化している場合がございます。また、具体的な状況によって課税関係が変わる可能性がありますので、記載情報に基づいて行動される前に、弊所までご相談して頂ければと思います。