前回のコラムでご説明したとおり、国外財産調書制度は、国外財産からの所得の申告漏れについて、納税者の申告を促すために「アメ」と「ムチ」を準備しております。そのため、国外財産については、国外財産調書の作成だけでなく、所得の申告漏れへの対応もあわせて考える必要があります。
今回は、国外財産のうち海外預金について、国外財産調書を作成する際の留意点をQ&A形式で解説させていただきます。
目次
Q.預金が国外財産調書の報告の対象となるかどうかは、どのように判断するのですか?
預金口座を開いた金融機関の支店が、海外にある場合は報告の対象となります。
日本の銀行か海外の銀行か、また、円預金か外貨預金かは、判断に際して関係ありません。 例えば、外資系金融機関の日本支店への外貨預金は、報告の対象になりません。これに対して、日本の金融機関の在外支店への円預金は、他の国外資産とあわせて5,000万円を超えた場合は、報告が必要となります。
海外駐在や海外留学中に、日本の金融機関の海外支店に預金口座を開いて、それが現在までそのままの方もいらっしゃると思います。海外預金の利子所得の申告漏れがあるかもしれませんので、一度ご確認されてみてはいかがでしょうか?
>>海外口座の利子所得で課税されるケースは、こちらをご覧ください。
Q.米国の金融機関で預金口座を持っていますが、この預金利子は非課税となっています。国外財産調書の報告の対象となりますか?
他の国外財産とあわせて5,000万円を超えた場合は、報告の対象となります。
米国では、申請により、非居住外国人が得る利子について、源泉徴収の対象外とすることが認められています。しかし、預金口座を開いた金融機関の支店が国外にあれば、利子所得が課税か非課税かは関係なく、国外財産として報告が必要です。
Q.海外のFX会社を通じてFX取引を行っております。その際の入出金は、海外の電子決済サービスを利用していますが、この口座残高も国外財産調書の報告の対象となりますか?
他の国外財産とあわせて5,000万円を超えた場合は、報告の対象になると考えます。
海外でのFX取引だけでなく、ブックメーカーやオンラインカジノの決済手段としてNETELLERやSkrill (Moneybookers)などの電子決済サービスが広く利用されております。 これらはネット上で口座を開くことができるため、支店が国内か海外かでは判断できません。
国外財産調書の目的は海外所得の申告漏れを防ぐことですので、電子決済サービスの運営事業者の所在地が海外である場合は、報告の対象になると考えられます。
Q.海外預金の国外財産調書上の評価額はどのように計算するのですか?
その年の12月31日における預入高で評価します。ただし、円換算が必要です。
国外財産の評価は、その年の12月31日における時価又は見積価額によりますが、実務上の手間を軽くするために、簡便的な評価法が認められています。海外預金については、その年の12月31日における預入高によることができるとされています。
実務上は、通常2月下旬から3月上旬に、金融機関から送付されるStatementに記載された前年12月31日時点の預入高を評価額とします。
また、円換算は、その年の12月31日における対顧客電信買相場(T.T.B)を用いて行います。
>>その他の国外財産の評価法は、こちらをご覧ください。
税務署では昨年から、国外財産調書の提出義務があると見込まれる方に対して、国外財産調書制度の案内書類を送付しております。案内書類が送られてきたにも関わらず調書を提出しなかった場合や、税務署がすでに把握している海外預金口座の記載が国外財産調書になかった場合などは、税務調査に発展する可能性があります。
>>今年(2014年3月17日提出期限分)の国外財産調書を提出されていない場合の対応は、こちらをご覧ください。
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当コラムは2014年5月現在の税制に基づいて作成しており、読者の皆様のご理解を深めるために内容を簡素化している場合がございます。また、具体的な状況によって課税関係が変わる可能性がありますので、記載情報に基づいて行動される前に、弊所までご相談して頂ければと思います。