新型コロナウイルスと海外資産の税務調査

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会計士の高鳥拓也です。
コロナ禍の中、皆様お変わりありませんか。どうぞご自愛ください。

新型コロナウイルスが海外資産の税務調査に及ぼす影響について解説いたします。

目次

緊急事態宣言解除後の税務調査

5月25日に緊急事態宣言が解除されましたので、宣言中は原則、新規着手なし&中断となっていた税務調査が再開されるものと思います。ただ、国民感情や過去の震災時の対応を考えると、宣言解除後、直ちにコロナ禍以前の調査規模になることは考えづらいです。おそらく、7月10日の税務職員の人事異動以降に、新体制にて重要性の高い事案に絞って感染者等の推移を見ながら着手することになるかと思います。

2020年の海外資産の税務調査

CRS(共通報告基準)による海外口座情報の交換が2018年9月から始まっており、これまでに2回実施されています。

◎対象口座
第1回(2018年9月)
①2016年12月末の口座残高が100万USD超の個人口座、
②2017年1月1日以降に新規開設した個人・法人口座

第2回(2019年9月)
上記①②に加えて
③2016年12月末の口座残高が100万USD以下の個人口座
④法人口座

◎対象情報
情報交換年の前年分の収入情報(利子・配当・キャピタルゲインなど)と前年末の残高情報

CRSにより海外税務当局から提供される情報は、税務署が海外所得や海外資産の申告漏れを直接把握できるものです。2019年の税務調査においては調査対象者の選定や申告漏れ額の把握などに効果的に利用されており、今後もこの流れは続くものと思います。

2020年の税務調査は、前述のとおり、件数を減らして重要性の高い事案に絞って着手することが予想されますが、

・CRSで入手した海外口座情報は申告漏れを示す直接の証拠となること
・海外資産の申告漏れ額は多額になる傾向があること
・海外資産の保有者は富裕層であることが多く、納税者は富裕層に対して税の不公平感が強いこと

からすると、海外資産の税務調査は、税務署にとって調査効率が高い分野といえますので、コロナ禍でも引き続き重点的に調査がなされると考えます。

また、申告漏れ額の多寡によっては、対面による実地調査ではなく、お尋ねや調査票という形式で文書による接触を図る可能性もあります。

海外資産の申告漏れがある場合、税務調査となるのは時間の問題ですので、このコロナ禍における税務調査の中断期間を利用して自主的な修正申告の準備を進めるのが最善の対応と考えます。

CRSの最新動向は、こちらのQ&Aをご覧ください。

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当コラムは2020年5月現在の税制に基づいて作成しており、読者の皆様のご理解を深めるために内容を簡素化している場合がございます。また、具体的な状況によって課税関係が変わる可能性がありますので、記載情報に基づいて行動される前に、弊所までご相談して頂ければと思います。

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