例年、税務署の新事務年度が始まる7月1日から海外送金に関して「国外送金等のお尋ね」の送付や税務調査が本格的に始まります。これらの税務署対策に関して、よくいただくお問合せについてお答えいたします。
Q1. 昨年、海外送金をしたところ、「国外送金等のお尋ね」が届きました。なぜ税務署は海外送金を把握できているのですか?
100万円を超える海外送金(国内→海外、海外→国内の両方)については、国内金融機関がその内容を税務署に報告する義務があります。そのため、税務署は100万円超の海外送金を全て把握しています。
「国外送金等のお尋ね」は、通常、送金してから半年~1年後に届くことになり、海外送金資金の形成経緯や使途、また、贈与事実や申告漏れの有無などの回答を求められることになります。
最近の動向として、200万円前後の海外送金でも「お尋ね」が届いておりますので、まとまった資金を海外送金される場合は、将来「お尋ね」が届くものと想定されるのがよろしいかと思います。
なお、今後、海外送金とマイナンバーの紐付けが予定されておりますので、名寄せが容易になり、税務署にとっては効率的な税務調査が行いやすい状況が整備されていくものと予想されます。
Q2. 「お尋ね」への回答にはどのような点に気をつける必要がありますか?
事実に基づいて回答してください。その際、その事実を説明できる証拠を添付資料として提出するのが望ましいです。
事実と異なる回答や不十分な回答の場合は、追加の質問を受けたり、場合によっては税務調査に発展する可能性があります。ご自身での対応が心配な方は国際税務に詳しい税理士に相談されるのが安全かと思います。
また、海外所得の申告漏れがある方は、「お尋ね」が届いてから申告しても加算税の軽減・免除を受けることができますので、お尋ねへの回答と併せて自主的に申告されることをおすすめします。なお、国外財産調書を提出されていない方も、提出を検討ください。
Q3. 「お尋ね」への回答が、回答期限に間に合いそうもありません。回答期限を経過することに対してペナルティはありますか?
ペナルティはありませんが、税務署の担当官に回答が遅れる旨、連絡しておくのがよろしいかと思います。
Q4. 「お尋ね」に回答しない場合はどのようなペナルティがかかりますか?
「お尋ね」の法的な位置付けは、税務調査ではなく行政指導ですので、回答しない場合でも特段の法的ペナルティを受けることはありません。
しかしながら、回答しない場合は、税務調査に発展する可能性がありますので、トータルで見ると回答するのが合理的な選択かと思います。例えば、海外所得の申告漏れがある場合に、「お尋ね」の段階で申告すれば、加算税の軽減・免除を受けることができますが、税務調査の段階になると加算税の軽減・免除を受けることができません。
なお、最近の動向として、「お尋ね」を経ずして、すぐに税務調査が始まることもありますのでご留意ください。
Q5. 日本に帰国するにあたり、海外赴任中に貯めた資金を日本に送金したところ、「国外送金等のお尋ね」が届きました。どのように回答すればよいですか?
非居住者期間の国外所得は、日本では課税されません。したがいまして、送金資金は非居住者期間に得た資金であること、つまり、日本では申告納税が必要ない資金であること を回答してください。その際、証拠資料として戸籍の附票などを提出し、非居住者期間を明確にするのがよろしいかと思います。
Q6. 海外に住む息子(娘)夫婦にマイホーム取得資金の援助のため海外送金をしたところ、「国外送金等のお尋ね」が届きました。どのように回答すればよろしいでしょうか?
マイホーム取得資金の援助に至る経緯などを踏まえて、慎重に対応する必要があります。ご自身で回答される前に、国際税務に詳しい税理士に相談されるのがよろしいかと思います。
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当コラムは2016年4月現在の税制に基づいて作成しており、読者の皆様のご理解を深めるために内容を簡素化している場合がございます。また、具体的な状況によって課税関係が変わる可能性がありますので、記載情報に基づいて行動される前に、弊所までご相談して頂ければと思います。