税務上の居住地 住民票の影響は?

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2018年9月から共通報告基準(CRS)による情報交換が始まります。これに伴い、日本の金融機関は新規口座開設などの際に、税務上の居住地を記載した届出書の提出を求めています。

税務上の居住地とは、所得税法上の「居住者」と扱われる居住地です。

ここで、所得税法上の居住地の判定においては、住民票の有無は直接的な関係はないので注意が必要です。住民票が有っても非居住者となる場合、住民票が無くても居住者となる場合があるということです。

目次

1. 居住者の判定

所得税法では

・「居住者」は「国内に住所を有し、又は現在まで引き続いて1年以上の居所を有する個人」(所得税法2①三)。
・「住所」は「各人の生活の本拠をいう(民法22)」
・「生活の本拠」は客観的事実に基づいて判定する(所基通2-1)

としています。そして「客観的事実」には、①住居②職業③資産の所在④親族の居住状況⑤国籍などがあります。

なお、滞在日数のみで所得税法上の「居住者」を判定するわけではないため、外国に1年の半分超(183日以上)滞在している場合であっても、生活の本拠が日本にあれば、日本の居住者となりますのでご注意ください。

これに対して、地方税法上の居住者の判定は、実務上、原則として、住民票の有無で判断されることになります。

2. 居住者判定のQ&A

Q.「居住者」と「非居住者」のどちらに該当するか不明確な場合は、どのように判断するのでしょうか?

A . 次の規定により「居住者」または「非居住者」と推定することになります。

ただし、これらの規定はあくまで推定規定ですので、実務上は客観的事実(①住居②職業③資産の所在④親族の居住状況⑤国籍など)に基づいて判断することになります。

①「居住者」と推定する場合(所令14)
国内に居住することとなった個人が、国内において、継続して一年以上居住することを通常必要とする職業を有する場合など

②「非居住者」と推定する場合(所令15)
国外に居住することとなった個人が、国外において、継続して一年以上居住することを通常必要とする職業を有する場合など

Q. 海外で10年以上居住していますが、住民票は実家に置いたままです。日本の居住者と認定されることはありますか?

A. 所得税法上の居住者判定において、住民票がある事実のみをもって、日本の居住者と認定されることはありません。居住者かどうかは、国内に生活の本拠があるか否かで判断しますので、生活の本拠が国内になく海外にあれば非居住者となります。

なお、本来は市区町村に国外転出届を提出する必要があり、提出を怠る場合は、地方税の納税や国民年金、国民健康保険等の保険料支払いを求められることになりますのでご注意ください。

Q. 外国に住民登録をして、日本を含む世界各国に出張しています。この場合、日本の非居住者という理解でよいのですか?

A. 外国で住民登録をした事実のみをもって、日本の非居住者になることはありません。非居住者かどうかは、国内に生活の本拠があるか否かにより判断することになります。

Q. 子供が海外留学で2年以上日本にいません。この場合の税務上の居住地はどのように判定しますか?

A. 税目によって居住地の判定が異なります。

所得税法上は、国外において継続して1年以上居住することを通常必要とする職業を有する場合には非居住者と推定されますので、お子さんは非居住者となる可能性が高いです。

これに対して、相続税・贈与税法上は、海外留学中であったとしても居住者の扶養親族となっている場合は、租税回避を防ぐために、居住者として取り扱われることになっています。

日本の税法における居住者の判定は、諸外国の183日ルールのような客観的な日数基準を採用しておらず、事実認定に基づいて(最終的には税務署の)判断となるため、納税者からすると、ご自身や家族が居住者と非居住者のどちらに該当するのか判断に迷われることが多いかと思います。

その場合は、過去の裁決事例や裁判例などに照らして判断していくことになりますので、個別にご相談いただければと思います。

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当コラムは2017年4月現在の税制に基づいて作成しており、読者の皆様のご理解を深めるために内容を簡素化している場合がございます。また、具体的な状況によって課税関係が変わる可能性がありますので、記載情報に基づいて行動される前に、弊所までご相談して頂ければと思います。

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