今年から海外に5,000万円を超える財産を持つ方を対象に、「国外財産調書制度」が始まりました。初年度ということもあって、弊所のクライアント様からは様々なご質問を頂戴しております。国外財産調書制度に関して、特に多かったご質問や今後の注意点をQ&A形式で解説させていただきます。
目次
Q.そもそも国外財産調書制度ってなんですか?
年末時点で海外に5,000万円(時価)を超える財産をお持ちの方が、翌年3月の確定申告期限までに財産の内訳や金額などを税務署に提出しなければならない制度です。海外の財産にかかる所得税や相続税・贈与税の申告漏れを防ぐために、この制度が導入されました。
今年(2014年3月17日期限分)は導入初年度のため、国外財産調書の不提出や記載漏れ、虚偽記載などによる罰則(1年以下の懲役または50万円以下の罰金)は適用がありません。罰則の適用は、来年提出分からとなります。
>>国外財産調書制度について、詳しくお知りになりたい方はこちらをご覧ください。
Q.確定申告とは何が違うのですか?
申告の対象が異なります。確定申告は1年間の全世界の所得(≒収入)が対象となります。これに対して、国外財産調書は年末時点での海外の財産が対象となる点で異なります。
なお、ご存じない方もいらっしゃると思いますが、日本にお住まいである以上、1円でも海外からの所得があれば、原則として日本で確定申告する必要がありますのでご注意ください。
>>海外からの所得の確定申告について、詳しくお知りになりたい方はこちらをご覧ください。
Q.提出するメリットはあるのですか?
提出するメリットはあります。期限内に国外財産調書を提出した場合は、海外所得の申告漏れに対する追徴税額からペナルティ(過少申告加算税や無申告加算税)の5%が減額されることになります。
Q.提出しないことのデメリットはなんですか?
国外財産調書を提出していない場合に、海外所得の申告漏れが判明したときは、その追徴税額に対して5%の追加ペナルティが課せられることになります。
Q.今年は提出しなかったのだけど、どうすればいいですか?
国外財産調書を提出されていない方で、海外からの所得の申告漏れがある場合は、今からでも遅くないので修正申告(期限後申告)とあわせて提出することをお勧めします。
これは、国外財産調書を期限後に提出した場合でも、修正申告(期限後申告)とあわせて提出すれば、期限内に提出したものとみなされるからです。
国外財産調書を提出していない場合に、税務署が国外送金等調書(※)などですでに海外財産を把握しているときは、税務調査に発展する可能性が高いと考えられます。税務調査の結果、国外財産からの所得の申告漏れが判明したときには修正申告などが求められ、通常は過去3~5年、最大7年分の追加納税が必要となります。さらに、過少申告加算税などに加えて、国外財産調書の未提出による5%の追加ペナルティが課されることになってしまいます。
(※)国外送金等調書とは、100万円を超える海外送金(日本から海外、海外から日本への送金)があった場合に、金融機関などから税務署に提出される調書です。税務署はこの調書をもとに、「お尋ね」と呼ばれる文書を納税者に送ってその資金の使い道を尋ねたり、税務調査を行っています。
>> 「お尋ね」について、詳しくお知りになりたい方は、こちらをご覧ください。
Q.「お尋ね」など税務署からの連絡があってから提出しては遅いですか?
この場合は国外財産調書を期限内に提出したものとみなされない可能性があります。従いまして、税務署から「お尋ね」などの連絡がある前に、自主的に国外財産調書を提出されるのがよろしいかと思います。
>>今年(2014年3月17日提出期限分)の国外財産調書を提出されていない場合の対応は、こちらをご覧ください。
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当コラムは2014年5月現在の税制に基づいて作成しており、読者の皆様のご理解を深めるために内容を簡素化している場合がございます。また、具体的な状況によって課税関係が変わる可能性がありますので、記載情報に基づいて行動される前に、弊所までご相談して頂ければと思います。