海外にお住まいの日本人の方から、海外には日本の税務に精通した専門家が少なく相談できる人がいないということで本サイトを通じて税務相談を承る機会が増えております。相談者の皆様の多くは、日本から海外への送金、また、海外から日本への送金の際の税金問題について高い関心をお持ちです。
そこで今回は海外にお住まいの日本人の方からよく頂くご質問をまとめて回答させて頂きます。
Q1. 日本の家族に税務署から「国外送金等のお尋ね」が届きました。そもそも「お尋ね」とはなんですか?また、どのように対応すればよいですか?
日本から海外、また、海外から日本へ100万円を超える送金をする場合、日本の金融機関から銀行口座の登録住所を管轄する税務署に支払調書が提出されます。この支払調書に基づいて、税務署から送金原資や使途、また、海外所得の申告の有無などを問い合わせる文書が届くことがあります。この文書を「国外送金等に係るお尋ね」といいます。
「お尋ね」は、法律上の根拠がない行政指導として送付される文書ですので、回答することはあくまで納税者の任意(自由)です。しかしながら、回答がない場合や税務署が把握している事実と回答内容に食い違いがある場合は、税務調査に発展する可能性があるので注意が必要です。仮に税務調査となった場合、通常は、税務署の調査官が平日の日中に自宅に来て実施することになりますので時間的にも心理的にもご負担が多いものと思います。
そのため、税務署とのやり取りで時間を取られたり税務調査に発展することがないよう、一連の資金の流れを税務署担当官が容易に理解できるように整理して回答するのが「お尋ね」への対応のポイントと言えます。
Q2. 海外で住宅を購入するため、日本の両親から購入資金の一部を援助してもらおうと考えています。日本の税金はかかりますか?
ご両親が日本居住者ですので、日本の贈与税が課税されます。取りうる対策は①金銭の貸し借りにする②相続時精算課税制度を利用する③資金の負担割合に応じて不動産登記を行う の3つです。詳しくはこちらをご欄ください。
Q3. 日本の両親が高齢のため、老後のことも考えて海外に呼んで一緒に生活しています。日本にある両親名義の不動産を売却して海外に送金したいのですが日本の税金が心配です。
不動産売却により売却益が出た場合、日本で申告納税が必要です。また、海外送金に際して日本の贈与税に注意する必要があります。詳しくはこちらをご覧ください。
Q4. 日本の両親が高齢のため、将来の相続が心配です。私は海外居住者(日本非居住者)ですが、そもそも日本の相続税は課税されるのですか?
ご両親が相続開始時に日本に住んでいる場合は、相続する人が海外に住んでいたとしても、また、相続する財産が国内にある財産だけでなく海外にある財産についても日本の相続税の対象となります。詳しくはこちらをご覧ください。
Q5. 相続した日本の不動産を賃貸するか、売却しようと考えています。それぞれの場合の税金の取扱いを教えてください。
賃貸の場合は賃貸収入を、売却の場合は売却益がでれば、日本で申告し納税しなければなりません。詳しくはこちらをご覧ください。
Q6. 日本に賃貸不動産があるので確定申告をしています。海外居住者でも青色申告の特典を受けることはできますか?
青色申告の条件を満たせば、海外居住者でも特典を受けることができます。詳しくはこちらをご覧ください。
Q7. 日本の両親が高齢のため、年に何度か日本に帰国して身の回りの世話をしています。日本での諸手続のため住民票も日本に置きました。日本居住者になるのでしょうか?
税法上の日本居住者かどうかは、税務署に、日本に「生活の拠点」があるかどうかで判断されます。住民票の有無のみで判断されることはありません。そのため、住民票があることのみをもって日本居住者とされる可能性は低いです。反対に、住民票がなくても日本居住者と認定される可能性がありますのでご注意ください。詳しくはこちらをご覧ください。
(2017年9月13日追記)
2018年9月にCRS(Common Reporting Standard:共通報告基準)による情報交換が予定されています。現状、税務署が居住者の国外財産の存在を把握する方法は、100万円超の海外送金の場合に銀行から提出される国外送金等調書が中心です。この情報交換が始まることより、税務署は海外送金がなくても国外財産の存在を把握することが可能となります。海外送金をしていない(する予定がない)ので、税務署には国外財産や国外所得を把握されることはない という考えはリスクが高いので対応について検討されることをおすすめいたします。
CRSの概要や注意点は、こちらをご覧ください。
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当コラムは2015年1月現在の税制に基づいて作成しており、読者の皆様のご理解を深めるために内容を簡素化している場合がございます。また、具体的な状況によって課税関係が変わる可能性がありますので、記載情報に基づいて行動される前に、弊所までご相談して頂ければと思います。