米国株式(RSU)のお尋ね対応をズバリ解説!

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7月から税務署の新事務年度が始まり、お尋ねや税務調査が本格化し始めました。それに伴い、外資系企業の方からストック・オプションやRSUなどに関する税務署対応のご依頼を頂く機会が増えております。今回は、ストック・オプションやRSUにより取得した外国親会社株式に関する税金申告についてよくあるご質問をQ&A形式で解説致します。

ご相談内容

米国に親会社がある外資系企業に勤務しており、毎年、ボーナスの一環としてRSUというストック・オプションの一種をもらっています。これまでRSUにより取得した米国親会社株式は売却せずそのままにしていたのですが、昨年、住宅購入資金に充てるため全て売却して日本に送金しました。先日、税務署より「国外送金等のお尋ね」が届き、どのように対応しようか困っています。

勤務先からの指示により、平成24年分以降RSUを給与所得として確定申告していましたが、米国親会社株式の配当や売却益については申告していませんでした。平成23年以前は年末調整のみです。

 >>RSUやESPPに関して「お尋ね」ではなく、税務調査の連絡があった方はこちらをご覧ください。

Q. RSUに関する税金申告について教えてください。

RSUは売却する権利を得た時は「給与所得」として、実際に売却した時は「譲渡所得」として申告する必要があります。

RSUは株式を付与されてもすぐに売却することができず、通常は、1年ごとに4分の1(又は3分の1)ずつ売却する権利を得ていくことに特徴があります。この売却する権利を得ることを「Vest」といい、Vestされた株式の時価相当額を給与所得として申告します。

Q. 取得した米国親会社株式の配当や売却益に関する税金申告について教えてください。

日本での米国株式の配当や売却益の税金申告は、米国で課された税金を日本の税金から控除するため外国税額控除の適用があること、日米租税条約で特別な扱いが定められていること、国内株式に認められる特例が認められないことなどから、国内株式と異なる取扱いとなっています。

また、ストック・オプションやRSUの付与により米国親会社株式を取得した場合、米国親会社が利用する海外の金融機関で株式が管理されることが多いようです。この場合、国内金融機関を利用して外国株式の配当を受け取る場合や外国株式を売却する場合と異なる取扱いとなるためさらに注意が必要です。

以下、米国金融機関にて米国親会社株式が管理されているケースを前提としてご説明いたします。

①米国株式の配当

米国株式の配当は、日本では源泉徴収されず、米国において源泉徴収されるのみです。米国非居住者の源泉徴収税率は30%ですが、日米租税条約の適用を受ける届出書(Form W-8BEN)を提出している場合は、日米租税条約により源泉徴収税率は10%となります。

通常、米国親会社は上場企業ですので、この場合、日本では申告分離課税として申告することが認められています。また、他の上場株式(国内の金融機関を利用したもの)との譲渡損失と損益通算することができます。なお、外国税額控除の適用は認められますが、配当控除は認められていませんのでご注意ください。

米国親会社からの配当が無いものと認識されている方も、配当を米国親会社株式の取得に投資するプログラムになっている可能性もあります。この場合、確定申告が必要ですので、念のため海外金融機関のStatementを確認することをお勧めいたします。

②米国株式の売却益

米国株式の売却益に対する米国非居住者の源泉徴収税率は30%ですが、Form W-8BENを提出している場合は、日米租税条約により米国株式の売却益への課税は免除されます。

日本では申告分離課税として申告し、20.315%(所得税15.315%・住民税3%)の課税となります。なお、上場株式の特例である上場株式配当との損益通算や譲渡損失の3年間の繰越控除は認められていませんのでご注意ください。なお、平成25年12月31日までの軽減税率10.147%(所得税7.147%・住民税3%)の適用も認められていませんでした。

③外国税額控除

米国株式からの配当や売却益に対して米国で課税された場合、日本で確定申告を行うことで、日本の所得税額から米国での所得税額(源泉徴収税額)を控除することができます。

所得税額から控除しきれない場合は、復興特別所得税、道府県民税、市町村民税の順に各控除限度額まで控除することができます。また、その年に控除し切れなかった外国税額控除は、翌年以降3年間の繰越利用が認められています。

なお、米国にて、日米租税条約で定められた限度税率を超える税率で所得税が課された場合でも、外国税額控除として認められるのは限度税率により決定された米国所得税額(源泉徴収税額)のみとなります。この場合、IRS(米国の税務当局)に請求を行うことで、過大に課された米国所得税額の還付を受けることができます。

例えば、米国株式の配当を得た場合、Form W-8BENを提出していないときは、米国株式の配当に対して30%の源泉徴収をされることがあります。この場合、日本の確定申告では、日米租税条約で決定された米国所得税が10%であるため、外国税額控除の適用は10%分しか受けることができません。過大に課された米国所得税額は、Form 1040NRで申告して初めて、還付を受けることができます。

Q. 国外送金等のお尋ねにはどのように対応するのがよいでしょうか?

お尋ねへの回答とあわせて、自主的に平成21年~平成23年分の期限後申告と平成24年・平成25年分の修正申告をされることをお勧めいたします。

平成23年分以前は年末調整のみで確定申告をされていないので、税務署は税務調査により平成21年分まで遡って税額の決定をすることできます。税務署が税額の決定をする場合、無申告加算税が15~20%課されますが、自主的に申告した場合は無申告加算税が5%に軽減されることになります。
同様に、平成24年分以降も税務調査が始まった後では過少申告加算税が追加納税額に対して10~15%課されますが、自主的に申告した場合は免除されることになります。

したがって、ペナルティの軽減の観点から、お尋ねへの回答とあわせて、自主的に期限後申告及び修正申告をされることをお勧めいたします。

>>RSUやストック・オプションの国外財産調書における評価方法は、こちらをご覧ください。

>>非居住者の株式譲渡やストックオプション行使に対する課税は、こちらをご覧ください。

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当コラムは2014年8月現在の税制に基づいて作成しており、読者の皆様のご理解を深めるために内容を簡素化している場合がございます。また、具体的な状況によって課税関係が変わる可能性がありますので、記載情報に基づいて行動される前に、弊所までご相談して頂ければと思います。

コメント

  1. O様 より:

    RSU株売却について質問です。取得価額を算出するとき、RSUを取得したときは円換算して所得税の申告をしましたが、配当を再投資したものもその都度円換算して取得費を求めていいのでしょうか?

    1. 公認会計士・税理士 高鳥 拓也 より:

      コメントありがとうございます。
      RSUの取得価額の算定に際しては、配当の再投資分(reinvestment)を再投資日の為替で換算して加算いただければと思います。
      宜しくお願いいたします。

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