令和3年度の海外資産の税務調査

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公認会計士の高鳥拓也でございます。
7月から税務署の新事務年度となり、税務調査が始まることになります。
令和3年度の海外資産に対する税務調査の動向について、コメントさせていただきます。

全体傾向

昨年度は新型コロナウイルス感染拡大の影響により、税務調査の着手件数が大幅に減少したものと思われます。今年度も新型コロナウイルスの感染状況によっては、税務調査が着手できない、または、着手しても長期の中断となる可能性があるため、税務署としては調査効率が高い(確実に申告漏れを指摘ができて、申告漏れ額が大きい)事案を優先的に選定するものと考えられます。

とりわけ、海外資産の税務調査は、下記の点から、調査効率が高い分野ですので、今年度も重点的に調査がなされる見込みです。

・CRSで入手した海外口座情報は申告漏れを示す直接の情報となること
・海外資産の申告漏れ額は多額になる傾向があること
・海外資産の保有者は富裕層であることが多く、納税者は富裕層に対して税の不公平感が強いこ

また、昨年度は税務調査の着手が制限されていたため、平時であれば税務調査対応に投じられた工数が、専ら情報分析業務(CRS情報など海外資産の情報分析、資産管理会社を含むファミリー全体の横断的な情報分析など)に充てられたものと考えます。したがって、調査先の選定、特に海外資産や海外所得の無申告事案の選定が例年より早く進んでいるため、7月早々の調査着手となることが想定されます。無申告の海外資産や海外所得がある方は、税務調査となる前に、自主的に申告されることをおすすめします。

海外資産を保有されている富裕層の税務調査が「統合調査」となる傾向も続くと考えます。統合調査とは、法人税・所得税・贈与税・相続税など複数税目にまたがる形で実施される税務調査です。典型的には、法人への税務調査に加えて、代表者及びご家族個人への税務調査がそれぞれの担当税目の調査官によって実施され、国際税務専門官が支援するという形で実施されます。

台湾財産

昨年、令和2年9月末の3回目のCRS情報交換にて、台湾と日本との間で初回の情報交換が実施されました。台湾は日本と人的・経済的な関係が深く、一定数の日本居住者が台湾に金融口座を保有していると考えられます、台湾から提供されたCRS情報に基づく税務調査は、今年度から実施される見込みですので、台湾に無申告の財産がある方は税務調査となる前に自主的に申告されることをおすすめします。

税金の時効

いわゆる税金の時効(除斥期間)は、所得税・相続税は本来の申告期限から5年、贈与税は6年です。税務調査にて、悪質な税金逃れと認定されると、本来の申告期限から7年となります。したがって、本年度の税務調査の対象(遡及)年度は、原則として、所得税は令和28年度から令和2年分、贈与税は令和27年度から令和2年分 となります。

海外資産の税務調査において、CRSに基づく情報交換で税務署が入手する調査対象者の海外金融口座の残高・収入情報は、申告漏れ把握の端緒となる有用な情報です。しかし、CRS情報は、あくまで情報に過ぎず、また、口座の入出金情報は情報交換の対象外ですので、最終的な課税においては、Bank Statement等の直接の証拠資料の入手が必要と考えられます。

これら証拠資料は日本国内では入手できないため、税務署は調査対象者に提出を求めることになりますが、調査対象者の協力が得られない場合などは、対象国に対して租税条約に基づいて情報提供要請を行う流れとなります。しかしながら、要請した情報の全てが提供されるかは対象国次第で、提供されるにしても年単位の時間がかかる といった事情があるため、提供された時点ですでに税金の時効が成立してしまっている という問題がありました。

この問題を解消するために、令和2年度税制改正にて、海外資産の税金の時効の見直しが図られました(国税通則法第71状)。これは、税務調査にて、調査官に提出を求められた海外取引や海外資産に関する資料を提出しない(提出できない)場合、調査官は租税条約に基づいて対象国に情報提供要請を行い、要請した日から3年間は税金の時効に関わらず課税ができる という内容です。対象は、令和2年4月1日以後に法定申告期限が到来する国税です(所得税の場合、令和元年分と令和2年分が対象です)ので、ご留意ください。

CRSの最新動向は、こちらのQ&Aをご覧ください。

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当コラムは2021年6月現在の税制に基づいて作成しており、読者の皆様のご理解を深めるために内容を簡素化している場合がございます。また、具体的な状況によって課税関係が変わる可能性がありますので、記載情報に基づいて行動される前に、弊所までご相談して頂ければと思います。

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