複雑でわかりにくい海外金融投資への課税と外国税額控除についてわかりやすくご説明します。
複雑でわかりにくい海外金融投資への課税と外国税額控除についてわかりやすくご説明します。
■国内金融機関を通じて配当を受ける場合
外国株式の発行会社が所在する国において源泉徴収された後(配当に対してその国の所得税が課せられない制度の国もあります)、日本で受取配当分(投資国課税後)について、上場株式等に該当する場合は20.315%(所得税15.315%・住民税5%)、それ以外の場合は20.42%(所得税のみ)の源泉徴収がなされます。なお、平成25年12月末までに受け取った外国上場株式等の配当は、軽減税率により10.147%(所得税7.147%・住民税3%)の源泉徴収とされていました。
(1)外国株式が上場株式等に該当する場合は、課税方法を①申告不要制度、②申告分離課税、③総合課税から選択することができます。
①申告不要制度は、配当を「特定口座(源泉徴収あり)」へ受け入れて、確定申告をすることなく他の上場株式等の配当や譲渡損失と損益通算することができます。この場合は、外国税額控除の適用が認められないのでご注意ください。
②申告分離課税と③総合課税の場合は確定申告が必要となります。この場合は、外国税額控除の適用が認められます。
なお、①~③のいずれの場合も配当控除は認められません。
一般的に、②申告分離課税又は③総合課税は外国税額控除が認められるため税務上有利な方法となりますが、所得水準によっては①申告不要制度が有利な場合もあります。
具体的に、次のケースでは①申告不要が税務上有利といえます。
・年末調整で課税関係が完結しているサラリーマンの方で、給与以外の所得が20万円以下のケース
・扶養控除、配偶者控除の対象になっている方が、確定申告すると控除枠を超える所得になるケース
(2)外国株式が上場株式等に該当しない場合は、課税方法は基本的に③総合課税となり申告が必要です。この場合、外国税額控除の適用が認められます。
■海外金融機関を通じて配当を受ける場合
外国株式の発行会社が所在する国において源泉徴収されるのみで、日本では源泉徴収されません。なお、配当に対してその国の所得税が課せられない制度の国もあります。
外国株式が上場株式等に該当する場合は、申告分離課税として申告を行います。この場合、国内の金融機関を利用した上場株式等の譲渡損失との損益通算を行うことが可能です。
外国株式が上場株式等に該当しない場合は、配当所得(総合課税)として申告することが必要です。
なお、申告分離課税、配当所得(総合課税)のいずれの場合も、外国税額控除の適用が認められますが、配当控除は認められませんのでご注意ください。
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■国内金融機関を利用した場合
外国株式が上場株式等に該当する場合は、「特定口座(源泉徴収あり)」を選択することで、原則として、申告の必要はありません。また、上場株式等の配当(申告分離課税として申告したもの)や譲渡損失との損益通算、譲渡損失の3年間の繰越控除が認められています。
但し、選択した口座の種類によっては、申告が必要となるケース、申告が必要ではないが申告するメリットがあるケースがありますので、売却損益の状況を考慮して判断する必要があります。例えば、複数の「源泉徴収あり」の特定口座のうち、一部の口座で損失が出たケースは、申告をすることで還付を受けられる可能性があります。
■海外金融機関を利用した場合
外国株式が上場株式等に該当するか否かに変わらず、申告分離課税として申告し、20.315%(所得税15.315%・住民税3%)の課税となります。上場株式等の特例である、上場株式配当との損益通算、及び、譲渡損失の3年間の繰越控除は認められていませんのでご注意ください。
なお、平成25年12月31日までの軽減税率10.147%の適用も認められていませんでした。
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■国内金融機関を通じて利子を受ける場合
外国債券の利子の課税は、20.315%(所得税15.315%・住民税5%)の源泉分離課税で完結するため、申告は不要です。
外国債券の利子に対して外国所得税が源泉徴収された場合、利子に対する税金が外国所得税と合わせて20%となるように国内での源泉徴収分が調整されます。この場合、源泉徴収の段階で二重課税の調整が行われるため、確定申告しても外国税額控除の適用を受けることはできません。
なお、日本が主要国と結んでいる租税条約の多くは、現地で源泉徴収できる外国所得税を最高10%としています。しかし、実際には現地の税法で定められた税率により10%を超えた税金が源泉徴収される場合があります。過大に源泉徴収された外国所得税は、外国の税務当局に還付請求することによって還付されることになります。
■海外金融機関を通じて利子を受ける場合
日本国内では源泉徴収されず源泉分離課税が適用されないため、利子所得(総合課税)として申告が必要です。外国所得税が源泉徴収されている場合は、外国税額控除の適用が認められています。
外国債券の税制は、国内債券の税制と同様に、平成28年1月1日以後に改正が行われますので、平成27年12月31日までの取扱いであることをご注意ください。
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外国債券の譲渡益(売却にともなって生じる為替差益を含む)は、一部の例外を除いて、非課税となり申告は不要です。また、国内債券と異なり経過利息も非課税となり、源泉税相当額の控除がなされません。
なお、外国債券の譲渡損は、なかったものとみなされます。
譲渡益が非課税とならない外国債券の代表的なものは、次のとおりです。
①新株予約権付社債
株式等に係る譲渡所得として申告分離課税の対象となり、申告が必要です。一定の条件を満たす場合は、上場株式等の特例の適用も可能です。
②割引債(ゼロクーポン債)や著しく利率の低い債券(ディープ・ディスカウント債)
譲渡所得として総合課税の対象となり、申告が必要です。外国債券の保有期間が5年を超える場合は、軽減措置が適用されます。
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外国債券の償還差益は、雑所得として総合課税の対象となり申告が必要です。また、償還にともなって生じる為替差益も、雑所得として総合課税の対象となります。
なお、外国債券の償還差損は、なかったものとみなされます。
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FX取引による所得は、原則として雑所得となります。1年間に決済した取引の為替損益とスワップポイントの合計額から売買手数料等の経費を控除して所得を計算します。
①取引所取引や国内店頭取引の場合
「先物取引に係る雑所得等の課税の特例」により、20.315%(所得税15.315%・住民税5%)の申告分離課税として申告が必要です。
FX取引による所得や損失は、日経225先物やオプション取引、取引所FXなどの市場デリバティブ取引の所得や損失と損益通算が可能です。また、損失が発生した場合、翌年以降3年間にわたって繰越控除が可能ですが、繰越控除を受けるためには申告期間中にFX取引をしない場合でも確定申告が必要です。
②海外店頭取引の場合(海外FX業者を利用する場合)
店頭取引であっても、「金融商品取引法に規定する店頭デリバティブ取引」に該当しない取引は、特例の20.315%の申告分離課税ではなく、原則どおり雑所得として総合課税の取扱いがなされています。
海外FX業者を利用した取引が、「金融商品取引法に規定する店頭デリバティブ取引」に該当するか否かは明確な規定がありませんが、雑所得の総合課税として申告することが安全と考えられます。
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外国投資信託は会社型と契約型とがあり、さらに契約型は投資対象に株式を含む株式投資信託と、株式を含まない債券投資信託に分類されます。
会社型と契約型のいずれに該当するかは、外国投資信託の投資単位で判断します。契約型の場合は、投資家は信託会社が発行するファンドの受益証券を購入するため、投資単位はUnit(ユニット)になります。これに対して、会社型の場合は、投資家は証券投資を目的する株式会社の株式を購入するため、投資単位はShare(株)になります。なお、オフショア籍の投資信託の多くは契約型となっています。
■会社型外国投資信託(外国投資法人)
会社型投資信託の分配金及び譲渡益は、日本の税法上、外国株式の配当と同様の取扱いとなります。詳しくは外国株式の配当の説明をご覧ください。
■契約型投資信託
(1)契約型外国株式投資信託
契約型外国株式投資信託の分配金は、日本の税法上、外国株式の配当に準じた取扱いとなります。詳しくは外国株式の配当の説明をご覧ください。
契約型外国株式投資信託の譲渡益は、日本の税法上、外国株式の譲渡益に準じた取扱いとなります。公募型に該当する場合、譲渡損益は、申告分離課税を選択した上場株式等の譲渡損益と損益通算することができます。また、翌年以降3年間の繰越控除も認められています。詳しくは外国株式の譲渡益の説明をご覧ください。
契約型外国株式投資信託の償還差益は、償還金額のうち元本相当額を上回る金額部分については、配当所得として課税されます。この配当所得は、日本の税法上、外国株式の配当に準じた取扱いとなります。
また、償還金額のうち元本相当額と取得費の差額相当部分については、譲渡所得として課税されます。この譲渡所得は、日本の税法上、外国株式の譲渡益に準じた取扱いになります。
(2)契約型外国債券投資信託
契約型外国債券投資信託の分配金は、日本の税法上、外国債券の利子に準じた取扱いとなります。詳しくは外国債券の利子の説明をご覧ください。
契約型外国債券投資信託の譲渡益は、日本の税法上、外国債券の譲渡益に準じた取扱いとなります。したがって、基本的に、譲渡益は非課税、譲渡損はなかったものとみなされます。
契約型外国株式投資信託の償還差益は、償還金額のうち元本相当額を上回る金額部分については、利子所得として課税されます。この利子所得は、日本の税法上、外国債券の利子に準じた取扱いとなります。詳しくは外国債券の利子の説明をご覧ください。
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